スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

交響詩篇 エウレカセブン ブルー・スカイフィッシュ2

 一つ目の軍のLFOから、ミサイルが吐き出される。ショルダーミサイル。どうということもない武器だが、奴らのLFOは性能が違う。回り込むようにして発射されれば、回避するしか俺たちに取る術はない。俺――ホランドは急速離脱した。

「駄目だリーダー、ここはトラパーが薄いんでロングボードのスピードに追いつけねえ!」

 レゲエ好きの陽気な黒人、マシューもさすがに弱音を吐きたくなったらしい。俺も思わず舌打ちしてしまう。
 
「くそうっ援護してくれ、マシュー!」

 軍の連中がニルヴァーシュに群がっている。俺達のLFOの相手をする必要がないということだろう。もう牽制のミサイルすら奴らは撃って来ない。舐めるなよ。

「俺が、突破をはかる!」

「まさかCFSを使うんじゃねえだろうな」

「こんなところで、あいつを失うわけには行くか」

 COMPAC FEED BACK。機械と俺達人間を繋げる装置、〝魂魄〟ドライブの緑色の輝きが赤く変化していく。血の色、闘争の色だ。CFSはリスクを伴う最終手段だが、軍のLFOをぶっち切ることくらいは出来る。

「ちょっと待てリーダー! そんな無茶――何だ、おい何だこいつは!」

「どうした!?」

 新手か? マシューに問いかけようとした俺はしかし、目を疑うことになる。

 ガキがいた。リフに乗ったガキが、戦場で波に乗ってやがる。真っ直ぐな澄み切った目で、ニルヴァーシュを目指している。

「あいつは……」

 ダイアンの弟。名前はレントン。いつもあいつが話していた。可愛い弟がいるんだ、と。

 ――姉貴と同じような目をしやがって。

 レントンはトラパーの波に見事に乗りながら、速度を上げていく。そしてその後を追いかける、
「スカイフィッシュが……」

 スカイフィッシュもついていくほど、今のレントンは波を信じ切っている。プロのリフ乗りである俺ですら、スカイフィッシュと共に飛ぶことは滅多にない。

 さすが、あいつの弟。そして、あの人の子供だ。

「面白い」

 やってみせろ、レントン。ねだるな、勝ち取れ、さすれば……



 ――俺。分かってたんだよ、姉さん。待ってちゃ駄目だ。ねだっちゃ駄目だ。俺は今、勝ち取りに行くんだ。

 顔面に叩きつけてくる風に耐えながら、僕はニルヴァーシュを目指す。と、ニルヴァーシュが目の前を通り過ぎていった。あの動きは、敵から逃げるようだ。

「う!」

 予想通り、軍のLFOのおでましだ。一つ目のカメラが僕を捕らえる。向こうは何もするつもりがないみたいだけど、このまま飛べばぶつかってしまう。

「くっ!」

 やるしかない! リフの角度を上げ、僕は急上昇した。思い出せ、僕。ここから先、どうすればいいか。ホランドを、あの子の動きを。

 上昇の頂点でリフを掴み、速度を殺す。それからリフを切り返し――



「カットバック、ドロップターン!」

 レントンは軍のLFOと衝突しようかという瞬間、リフの最高難易度の技を決めた。カットバックドロップターン。あいつの話じゃ、レントンはまだ14歳だ。確かに俺も14でカットバックドロップターンを決めはしたが、あそこは戦場じゃなかった。

「スッゲー、決めやがった!」

 マシューの興奮した声が通信機から漏れてくる。

 そう、あいつは勝ち取った。



 白と赤のLFO、ニルヴァーシュが急上昇する。その軌跡を追うようにして、ライフル弾が空中を抉っていった。ニルヴァーシュに群がるLFOは三体。固定武装がないのか、逃げるばかりで交戦しようとしない。

 やっぱりニルヴァーシュには、彼女にはこのアミタドライブが必要なんだ。さすれば悟りは開かれる。じっちゃんはそう言っていた。

 もう少しだ、もう少しでニルヴァーシュに辿り着ける。100m、50m、上空から下降してきたニルヴァーシュの頭部が僕の方へ向けられた。緑色のメインカメラと僕の視線が交じり合う。気付いてくれた。

 あとは、ほんの少し近づくだけでよかった。そうすれば、彼女にアミタドライブを渡せたんだ。でも、気を抜いた僕はニルヴァーシュが下降によって起こした突風に、バランスを崩してしまう。リフにかけていた足が外れ、重力の手が僕を抱く。落ち――

「うわああああああああっ!」

 今回は奈落の底なんて、生易しいものじゃない。珊瑚状の大地、そのパノラマが視界一杯に広がった。そして、段々パノラマのディティールが細かくなっていく。あそこは学校、あそこはいつも掘削機が耳障りな工事現場、あそこは、あそこは……僕は、死ぬのか?

 自分の絶叫をどこか遠くに聞きながら、ぼんやりと思ったその時だった。ニルヴァーシュが目の前に滑り込んできた。開かれるコックピット。あの子が顔を青くして僕を見上げている。

 僕は何とかニルヴァーシュのコックピットに落下できるよう、体を動かした。ビンゴ。僕はすっぽりとコックピットの中に落下した。

「き、君」

 狭いコックピットの中、僕は彼女に抱きつくような形になっていた。じわじわと広がる彼女の温かさ。防寒着もなしに空を落下した僕の体が、息を吹き返していく。

 助かった。そう自覚した途端、僕の中を興奮が駆け抜ける。

「出来た、本当に出来たんだ。カットバックドロップターンが俺にも出来たんだ」

 見たか、オッサン。ホランドの言う通りだ。僕に必要なスポットは、僕の目の前にあった。そして、そのスポットに僕を回り逢わせてくれたのは。勝ち取るチャンスをくれたのは。

「君のおかげだ。君がいたから出来たんだ。君、サイコーだ! 俺、君が好きなんだ!」

「はあ?」

「君だから出来たんだ。君じゃなきゃ駄目なんだ。俺は、君が大好きだ!」

 僕は彼女に抱きついた。花のような香りが彼女からする。

「好き?」

「ああ、だから俺が守ってやる。俺がこの機体と君を守ってやる。この、アミタドライブで」

 アミタドライブをポケットから引っ張り出すと、彼女は顔色を変えた。

「これのために?」

「じっちゃんが言ってたんだ。これをつければ、悟りは開かれる。そしたら、このLFOは、ニルヴァーシュtypeZEROは真に目覚めるんだ」

 僕はアミタドライブを振り上げた。目覚めろ、ニルヴァーシュ。

「アミタドラーイブセーットオン!」

 コンパクドライブにセットされたアミタドライブが、触手のようなものを伸ばした。コンパクドライブの輝きが増し、コックピットを包み込む。

「何だ、何なんだ、これ」

 光が収まった。僕はコンパクドライブを見た。一体、何が起きたんだ。何が変わったんだ。すると、コンパクドライブに文字が浮かび上がってきた。見慣れた文字だ。

「エウレカ……」

 何で、こんなところで。

 時を同じくして、あの子から短い悲鳴が漏れる。がくりと体から力が抜け、彼女はシートに沈み込んだ。

「ちょ、ちょっとどうしたの?」

 力を失ったのは彼女だけではなかった。ニルヴァーシュのパワーが落ちたのか、コックピット内が急に赤くなる。そして、またあの嫌な感覚だ。さっきも味わったばかりの、重力に抱かれる感覚。

 ニルヴァーシュが、落下を始めた。

「うわあああっ!」

 僕は咄嗟にLFOの操縦桿を握った。

「くそおおっ。あれ? 何で動かないの、何で? 何で?」

 だけど、いくら動かしてもニルヴァーシュは反応しない。LFOの操縦経験のない僕には、何がなんだか分からなかった。じっちゃんからある程度整備の知識を叩き込まれているとはいえ、操縦は別物なんだ。

 そうこうしている内に、一つ目のLFOが接近してくる。その肩が四方に割れ、

「ミサイル!?」

 白い尾を引いて、ミサイルが発射された。コックピット内に鳴り響くアラーム音。

「うっそ、ちょっと待って。何で動かないの?」

 僕は狂ったように操縦桿を動かした。やはりニルヴァーシュは反応しない。

「俺の人生、ここで終わりなの? 14年で終わっちゃうの? ちょ、ちょっと待って! うわああああっ!」

 ミサイルと目が合う。直撃する。死ぬ、死んでしまう。それなのに僕は、絶叫することしか出来なかった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

だっちゃん

Author:だっちゃん
リンクについて

ブログ検索
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
過去ログ
リンク
RSSフィード
全記事(数)表示
全タイトルを表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。