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交響詩篇エウレカセブン ペーパームーン・シャイン プチ小説vol1

 ボダラクの聖地、選択の門。この地はまた、炎に包まれている。

 戦いの匂い、死の匂いが私の記憶を呼び覚ます。私がまだ、軍にいた頃のことを――

「何で皆、君にこんなことするんだろう。何かいい人たちみたいなのに」

 レントンが私の額を消毒してくれる。彼は優しい。ボダラクの人々に投石された時も、私を庇ってくれた。

 でも。

 レントンは知らない。血にまみれた汚い現実を知らないから、彼は子供みたいに甘い性格でいられる。
「仕方がないんだよ」

「え?」

 額からレントンの手が離れる。

 私もレントンから目を反らす。

「仕方ないの。こんなことされるの、自業自得だから」

「でも俺、女の子にこんなことするなんて」

「仕方ないんだよ!」

 レントンはどんな顔をしているだろう。戸惑い? 恐れ?

 そして、今から彼の表情はどんな色に染まっていくのだろう。嫌悪? 侮蔑?

 熱く冷たい頭の隅でそんなことを考えながら、私は顔を上げた。戸惑いに彩られたレントンの瞳を正面から見据える。

「だって、私ここで大勢の人間達を殺したんだから」

 レントンの瞳が揺れる。

「この街に住む人間を殲滅すること。それが私達SOFに与えられた任務だった」

「SOF? それって……」

「私達がいた部隊。軍の特殊部隊のこと」

「それじゃあゲッコーステイトのもとって」

「そう、命令さえあればどんなことだってする、ただの人殺し部隊」

「そんな、噂は本当だったなんて」

 レントンが愕然とした表情になるけれど、私は話を続けた。これが私の現実。私達、ゲッコーステイトの現実だから。

「理由なんてなかった。ただ実行するだけ。それが私が私でいられる証明だった」

 武器を持つ人間も、無抵抗の人間も、皆、殺した。ニルヴァーシュの中で引き金を引き、私はモニターの向こうで死ぬ人間達を眺めた。

「それに、その時の私にはニルヴァーシュとホランド以外に信じられるものがなかった。だから、ホランドが戦えって言えば戦った」

 ただそれだけの日々を、私は送っていた。そのはずだった。

「だけど」

 あの日、この地で、私はいつものように人を殺した。ニルヴァーシュのビーム砲ではなく、機関銃で私が殺した。思わぬ反撃にあい、ニルヴァーシュは身動きが取れない状態だった。

 私は死体の確認に向かった。撃たれたふりをして、死体に紛れる者がいるかもしれないからだ。

 私の任務は、この街の人間の殲滅。誰一人として、逃がすつもりはなかった。

 けれど――私は、何かに覆いかぶさるように倒れた死体を蹴った。その死体の下には、三人の子供がいた。

 声を押し殺して泣く、金髪の少女。額を大きく切り裂かれた――私のせいだ――小さな男の子。そして、大きく見開いた目で、私を見る少年。

 少年と私の目が合った。

 その時、私の中で何かが壊れたような気がした。

「まさか、その時の子供達が!」

 そして今、私はまた何かを壊そうとしているのかもしれない。

 驚きの声をあげるレントンに、私は淡々と告げた。

「メーテル、モーリス、リンク」

「じゃあ、まさかその作戦を指揮してたのは」

「私達のチーム、SOFのリーダーは指揮官はホランドよ」

 爆音が、私達の耳をつんざいた。


「でもさ、でも仕方なかったんだろ。その時は戦争だったんだろそれに、君は軍人で」

 レントンは何かから逃げるようにして、ニルヴァーシュを見つめている。

 逃げないで、レントン。

 甘い、楽しいだけの夢は終わりなの。私達は、この血なまぐさい現実の中で生きていかなければならない。

「分かってない。今も私は戦争してる。私達がしてることはゲームでもスポーツでもない。私が戦うことで人間達は傷つき、死んでいく」

 ほんの少しだけためらった後、私は真実を口にした。

「築いていないかもしれないけど、レントン、君も加担しているんだよ。この戦争に」

 レントンは、微かに目を見開いた。
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