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カールじいさんの空飛ぶ家

THE ART OF カールじいさんの空飛ぶ家THE ART OF カールじいさんの空飛ぶ家
(2009/11/20)
ティム・ハウザー序文・ピート・ドクター

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 初から最後まで涙が止まらない。大切な人を失った人なら、冒頭で涙し、クライマックスで涙を流すだろう。この作品が「別離」をテーマにした他の映画と一線を画すのは、その涙がただ悲嘆に暮れるものではないという点だ。冒頭では哀しみから涙が零れるが、クライマックスでは感動に包まれて独りでに涙が流れていく。
 別離を拒絶していた老人が、愛妻の死を受け入れた時、どんな行動を取るのか。それまでの細やかな演出を気に留めながら、是非目にして欲しい。

 以下は映画の内容に触れるため、見たくない方には避けていただきたい。

 
とはいえ、問題がないわけではない。ささやかな演出の意図が分からず、「冒頭だけは良い」という評価が目立つ。確かに、冒頭のシークエンスは最高級の出来だ。幼いカールじいさんとエリーの可愛らしさときたら。特にエリー。あんなチャーミングな女の子を、嫌いになるわけがない。僅か数分でエリーのファンにされた観客は、カールじいさんと共に「夫婦の人生」を歩まされることとなる。そして、エリーの死と共に、カールじいさんと観客は「夫婦の人生」の終わりを体験する。映画を一本凝縮したかのような密度と、それを感じさせない鮮やかさは実に素晴らしい。冒頭だけでも金を払う価値はあるだろう。

 けれど、この映画の真の価値はその先にこそある。

 エリーとの生活の間、カールじいさんがどんな人物として描かれていたのか、ちゃんと覚えておいて欲しい。エリーの死後の、カールじいさんの動きに注視して欲しい。ポストに触れる時のカールじいさんの自然な動き、誰の家具を最も大切に扱っているのか。そして、カールじいさんが旅立った真の意味を考えながら鑑賞して欲しい。亡き妻への愛情がどれほど深かったのか、分かるはずだ。エモーショナルな演出をしないため(カールじいさんは涙すら流さない)、見えづらいと評価されるかもしれないが、私はこの距離感に優れた演出を大いに評価したい。(これ以上やると、ただの「泣ける」映画になってしまう。それでは駄目なのだ。これはピクサー=ディズニー作品なのだから)

 晩年には悲しみだけがあった「カールじいさんから見た夫婦生活」が、エリーにとってはどんな風に映っていたのか。クライマックスでエリーの想いが明かされると同時に、カールじいさんは大きく飛翔する。そこで描かれるのは喪失を乗り越え一人で立ち上がる人間の物語だ。涙一つ零さずに颯爽と前進するカールじいさんの勇気と強さに、熱く胸を打たれる。
 この映画が素晴らしいのは、その瞬間に冒頭のシークエンスまで意味を変えてしまう点だ。恐らく、二度目の視聴で、悲しみの涙を流す人は殆どいないだろう。涙を流すとしても、その意味合いはまったく違っているはずだ。
 
 実に鮮やかな手法で、爽やかな感動を呼んでくれる。

 愛する人の喪失が誰しも共有しえる体験でありながら、体験する時期が異なるため、人によっては理解できないかもしれない。ましてや子供には、なんのこっちゃ?だろう。(そんな子供たちのために冒険活劇が用意されているわけだが)けれども、喪失を経験した人、喪失から立ち直った人にとって、これほど勇気を与えてくれる映画はないのではないかと思う。

 本当に本当に、素晴らしい映画だ。
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テーマ : 映画評価
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