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交響詩篇エウレカセブン ペーパームーン・シャイン プチ小説vol2

 僕は炎に包まれる街を眺めていた。数十分前まで、この街は平穏だった。軍の残した爪跡が深く残っていたけど、それでも、こんな光景が繰り広げられるなんて、思いもしなかった。

 軍が今も何故、ここを爆撃するのか、僕にはよく分からない。

 分かっているのはこれが軍のやり方だということ、かつてホランドたちが軍にいたこと、この街を焼き払ったこと、そして――

 僕も、戦争に加担しているということ。

 僕は甘かったのかもしれない。

 明るく楽しいゲッコーステイト! ベルフォレストいた頃、僕はそんな幻想を抱いていて、ゲッコーステイトのメンバーになった後も幻想を捨てきれずにいた。
「私達が犯した罪は、どんな形でも償うつもり」

 張り詰めた声が聞こえてくる。

「でも、それ以上に私達は生き延びなきゃいけない。生き延びて、使命を果たさなきゃいけないの。そのためだったら、何だってするわ」

「それじゃあエウレカは戦わせるために、俺を連れてきたのかよ」

 僕は振り向き、エウレカを見た。彼女は殻に閉じこもるようにして、膝を抱えている。

「そうよ。君がいなくちゃニルヴァーシュはちゃんと動かないから。ニルヴァーシュがなければ、私達は使命を果たすことが出来ないから」

「何だよそれ」

 胸の奥が熱くなり、僕は拳を握り締めた。

 僕が許せないのは、〝使命を果たすための道具〟のように見られたことじゃない。そう見られても構わなかった。だって僕は、ベルフォレストから離れる時、決めたのだから。

 もう一度、彼女を信じるって。

 だから別にいいんだ、どんな風に見られていたって。

「使命だかなんだか知らないけどさ……じゃあ、だったら何で」

 僕が怒っているのは――

「何で君は、ここでメーテルたちを助けたんだよ!」

 僕の言葉はエウレカの殻を壊し、彼女に顔を上げさせた。

「全部が全部、信じたわけじゃない。でも、君が軍を抜けたのは、命令だからといって罪もない人たちを殺すのが嫌だからなんだろ。使命とか何とか、そんなこといってるけど、でもそれって軍の命令と何も違ってないじゃないか。エウレカ、君は嘘をついてるよ」

 僕はエウレカに歩み寄った。

「罪もない人が殺されていくのは嫌なんだろ。どんな形でも、償いはするんだろ」

「でも、今出て行ったらホランドたちに迷惑が……」

 エウレカはまた殻に閉じこもる。あのエウレカがここまで頑なになるなんて、彼女にはまだ何かあるのだろう。僕が知らない、エウレカが話さない何かが。

 でも、そんなことはどうでもいいんだ。今重要なのは――

「そうかよ」

 ニルヴァーシュに足をかけ、よじ登っていく。

「レントン、何するの?」

「ニルヴァーシュで軍の爆撃をやめさせるんだ」

「そんな無茶なこと」

「俺はティプトリーおばさん達を見殺しに出来ない」

「それは私も一緒だよ」

「だったら一緒に行こう、エウレカ!」

 僕はもう一度、エウレカに選択して欲しかった。メーテル達の母親になることを選択したのなら、エウレカにはやらなくちゃいけないことがある。

 償いなんて、そんなことを言うつもりはない。だけど、ここにはニルヴァーシュがあって。ニルヴァーシュを操縦できる僕とエウレカがいて。そして、僕とエウレカはティプトリーおばさん達に死んで欲しくないと思っている。

 だから僕は、エウレカに手を差し出したんだ。

「うわ、うわあああ。うわぁっ!」

 突然、ニルヴァーシュが動き始める。当然、僕はバランスを取れずに、頭から地面に突っ込む羽目になった。

「いってー何もしてないのに、いきなり……エウレカ?」

 エウレカは緑色に――コンパクドライブの色に光るニルヴァーシュのメインカメラを見つめていた。

 まるで、ニルヴァーシュと話しているかのように――

「行こう、レントン」

「え?」

「ニルヴァーシュが、レントンに従えって言ってる」

 呆然とした様子で、エウレカが言った。
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