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交響詩篇エウレカセブン ペーパームーン・シャイン プチ小説vol3

 ニルヴァーシュが黒煙の海を切り裂いていく。

 コパイシートのキャノピが壊れてしまったので、背後からエウレカに抱きつくようにして僕はニルヴァーシュに乗っていた。

「さっきのでナビが出来なくなったけど、穴はふさいだし、データはメインで見られるから問題ないよ」

「でもどうしよう。塔を回りこんでたら間に合わないかも」

「大丈夫、前を見て」

 天に向かって聳える二つの朽ち果てた塔が近づいてきていた。

 選択の門。そこを通る者に選択を迫る、ボダラクの聖地。

「この二つの塔の間をくぐり抜けて、先回りするんだ」

 僕たちは今、その門をニルヴァーシュでくぐり抜けた。
 門を抜けた途端、軍の爆撃機が砲撃を仕掛けてきた。さすがにここまで近づくと、彼らも気付く。

 低空から不意をついた方がよかったかもしれないと頭の隅で思いながら、僕はエウレカに叫んでいた。

「対空砲火!」

「大丈夫」

 一瞬、天と地が逆さまになる。

 くるりと華麗にターンを決めたニルヴァーシュはその勢いのまま、唯一の武装であるカッターを引き抜いた。

「うおおおおっ!」

 僕とエウレカの声が重なった。

 爆撃機のリフレクターに突き刺し、一気に切り裂く。一秒のタイムラグもなくリフレクターが炎を噴いた。ニルヴァーシュはその炎に機体表面を舐められながら、一気に離脱した。

 すべては一分も経たない内に行われた。やっぱり、エウレカは凄い。でも、いつものエウレカと違うような気がした。いつもの彼女は容赦なく相手を破壊する――そう、今回の爆撃機で言えばブリッジを狙うはずだ。

 でも、そんなことはどうでもいい。どうでもいいんだ。だって、重要なのはそんなことじゃなく――


 爆撃機のリフレクターを破壊した。それだけで、レントンは終わりにした。私ならブリッジを潰す。何故なら、生き残った軍人は別の爆撃機に乗って、またここを襲うから。

 私達の行為に意味はない。一時だけのこと。私の額に貼られた、この絆創膏のように。何もかも無意味なのに。

 でも、私は心のどこかで思っている。

 私は嘘をついている。無意味じゃないと思っているのに、そこから目をそらしているような、そんな……

「エウレカ、エウレカ。右、見てごらん」

 目を開くと、淡い銀色の光が見えた。満月。夜空を照らしている。

「ねえ知ってた? ここって皆に何かを選ばせるところなんだって。だからエウレカだって、きっとここで何かを選んだんだ」

 知っている。正確に言えば、この街を焼き払った後になって知った。だけど私は黙ってレントンの話を聞くことにした。

「それに、ティプトリーおばさんが行ってたけど、ここの見た目がどんなに変わっても、ここがここであることには変わらないんだって。俺は、君が昔ここで選んだことって凄いことだと思うし、その凄さは今も変わらないと思う」

 不意打ちのように、レントンの言葉が突き刺さる。

 分からない。どうしてこの子は、こんな風に言葉を紡げるのだろう。

「ここが変わらないのと同じようにね」

 私は誤解していたのかもしれない。

「君がたとえどんなことを前に選んでいたとしても、俺は君を信じるし、それに、俺はその時の君から何も変わってないことを信じるよ」

 レントンは、現実を知らないんじゃない。こういう子なんだ。ただひたすらに真っ直ぐで、自分の選択を信じている。そして、私を信じてくれている。

 レントンは、違う。私とは違う。

 でも、私の中にもレントンがいる。レントンの言葉が沢山染みこんでいる。

「変わった」

 目の中に海が出来て、波打った。

「私、変わっちゃったかもしれない」

 胸がすくむ。涙を流している私が理解できなくて、私が私でなくなっていくことが怖くて。

「君が来てから私、変わっちゃったかもしれない」

 レントンは真っ直ぐな目で私を見つめている。嘘をつかない瞳で、私を。

 ホランド、私達の選択はハリボテだったのかもしれない。

 ハリボテの、月の輝き――〝月光〟ステイト。


交響詩篇エウレカセブン ペーパームーン・シャイン
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