スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

交響詩篇エウレカセブン vol.6

eurekasyousetu.jpg

 しぶりの更新です。随分間が空きましたね、スミマセン。エウレカ小説だけに専念できればすぐに書き終わるんですが、そういう訳にもいかず。完結まで、もう少々時間をくださいませ。

※前回までのお話は、こちらをドウゾ。
「……エウレカ?」

 名前を呼ばれたような気がして、レントンはサブシートに目をやった。空っぽの座席には、先ほど取り出したライフルが浮いているだけだった。

「でも……幻覚じゃ、ないよな」

 魂魄ドライブには絶えず、〝RENTON〟の文字が浮かんでいる。人とスカブコーラルを繋ぐこの機械が、レントンを呼んでいる。

 エウレカが、呼んでいるのだ。

「もうすぐだよ、エウレカ」

 レントンの眼前には、巨大な繭が存在していた。大樹と化した指令クラスターの中心部に位置するその繭に近づくほどに、魂魄の輝きは増していく。

 もうすぐだ――レントンはもう一度呟いた。ゲッコーステイト、ユルゲンス、アネモネ、ホランド、彼らの助けを借りてきたこの旅も終わりが近づいている。

 誰が生き延び、誰が死んだのか。こんな終わり方は認められない、エウレカを連れ戻す、その想いだけでどれだけの人間を犠牲にしたのか。レントンの頭を、抗体コーラリアンに飲み込まれるターミナスが過ぎった。

 涙が滲んで、レントンの視界を歪めた。だが、すぐに視界は晴れる。無重力は、涙が留まることを許さない。

 そして、今更止まることもまた、許されない。

「くっ!」

 機体に衝撃が走り、レントンは前のめりになった。抗体コーラリアンからの攻撃ではない。衝撃を受ける寸前、触手のような物体が宙を切り裂いていた。大樹自体が、ニルヴァーシュの接近を拒んでいるのだ。

 姿勢を立て直したレントンは、はっと息を呑んだ。キャノピを無数の枝が取り囲み、機体は完全に絡め取られている。繭まであと数十メートルというところで、ニルヴァーシュは動きを
止められていた。

「くそっ、こんなところで……!」
 レントンはコンソールを叩きつけた。外は宇宙。生身の人間が生きていける場所ではない。宇宙と地上の数十メートルには、大きな隔たりがある。

 だが、何とかして繭との距離を縮めなければならない。ニルヴァーシュを動かせないかとコンソールを操作し始めたレントンの耳に、空気の抜けるような音が飛び込んできた。

 顔を上げてみれば、キャノピが自動的に開こうとしていた。レントンは顔を青ざめさせた。

「う、嘘だろ。俺、何もしてないぞ! つーか、やばっ! 止まれ、止まれって!」

 キャノピの動きは止まらない。無駄だと分かっていても、レントンは思わず口を押さえた。残った片手でライフルを肩から下げ、リフボードは脇に抱える。いざとなったら、窒息する前に飛び出すしかない。

「あ、あれ?」

 目を瞬かせ、レントンは恐る恐る口から手を離した。息を吸ってみる。問題ない。

「息が……出来る?」

 嘘だろと呟きながら、レントンは周囲を見渡した。うっすらと翠色に輝く光の膜が、大樹の周りに張られていた。これと同じものを、レントンは何度も目にしてきた。

 トラパーだ。どうやらトラパーのおかげで、大樹の周辺は地球と似たような環境に置かれているらしい。

「……トラパーがあるなら、飛べる!」

 リフボードを抱え、レントンはニルヴァーシュの肩を蹴った。繭との高さが同じになったところで、リフボードに足を乗せる。あとは波に乗るだけだ。地上でのリフと感触が違ったが、直進する分には問題はなさそうだった。

 繭まであと数メートルまで迫ったところで、レントンは振り返った。枝に囚われたニルヴァーシュは装甲のほとんどが剥がれ落ちていた。内部のアーキタイプが露出し、力なく垂れ下がっている。アクセル・サーストンのボードも、もはや原型を留めていない。

 ここまで続いてきた愛機との旅も、もう、終わりだ。

「さよなら、ニルヴァーシュ」

 絞り出した声は震えていた。レントンは目を拭い、繭へと向き直った。手を伸ばせば届く距離だ。リフボードから飛び降り、レントンは繭に取り付いた。外見から柔らかいものだと想像していたが、意外に固い。素手では、とても内部に入り込めそうにない。

 ライフルで撃ち抜くか?

 駄目だ。レントンは首を振る。銃弾でどうにかなるような代物にも見えなかった。

 どうする――思案するレントンの背後で、何かの軋む音が聞こえた。数秒後、音は大きさを増し、レントンの耳をつんざいた。

 振り返り、レントンは顔を歪めた。ニルヴァーシュは枝に飲み込まれ、今や大樹と一体化していた。レントンが感傷に浸る間もなく、枝が再び動き出す。ニルヴァーシュの外装を異物であるかのように剥ぎ取り、アーキタイプを飲み込んでいく。

 その時、レントンの目に光が飛び込んできた。

 魂魄の輝き。操縦席から吐き出された魂魄ドライブが宙を漂っていた。レントンは魂魄の輝きに目を奪われる。

 ――ホントに信じることが出来たら、信じる力は現実になるから。そしたらレントンはきっと空も飛べるし、大事な人も救えるし、私にもいつでも会える。

 ダイアン・サーストンの柔らかな声音が、俄かに蘇る。レントンは魂魄ドライブを見つめた。
 
 魂魄ドライブが人とスカブコーラルを繋ぐものだというのなら……
 
 レントンは再びリフボードに乗っていた。魂魄ドライブを掴み、空中で方向を切り替える。

「信じろ、信じるんだ。俺はエウレカを救える、救える、救える……」

 繭に着地し、レントンは魂魄ドライブを握り締めた。

 そして、彼女の名を口にした。

「エウレカァッ!」

 魂魄の輝きが、レントンを包み込む。

続く

スポンサーサイト

テーマ : 二次創作
ジャンル : サブカル

コメントの投稿

非公開コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

 初めまして。
 ウチはリンクフリーなので、どんどん貼っちゃってください。そちらからのリンクを確認次第、折り返しリンクさせていただきますので~
プロフィール

だっちゃん

Author:だっちゃん
リンクについて

ブログ検索
カテゴリー
最近のコメント
最近のトラックバック
過去ログ
リンク
RSSフィード
全記事(数)表示
全タイトルを表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。