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今月の本vol.2 第三期

 例の備忘録です。前回は文体やキャラクターに独特の味がある作品ばかり呼んでいたので、文体とレースで遊んでみました。今回も同じことをしようかなと思ったのですが、前回とは趣向を変えてフツーに、真面目に書いていこうと思います。

1.さよなら妖精


 氷菓でライトノベルデビューを果たした米沢穂信が放った、一般向けの小説。ユーゴスラヴィアからやってきた少女・マーヤと主人公守屋らの一瞬の交差を描きます。
 哲学的な意味はありますかと尋ねるヒロイン・マーヤが残す鮮烈な印象。そんなまだ見ぬ世界への扉……マーヤに焦がれる主人公、そんな主人公を見つめる少女の交わらない想いが何とも言えない切なさを生み出しています。本を読み終えた後には、そのあまりの切なさに感情が処理しきれず、思わず叫びだしたくなってしまうほど。人によっては、バッドエンドと映るかもしれません。けれども、救いを求めた人にだけ、最後に残された謎が解けるような構成になっています。
 マーヤは本当は、誰を愛していたのか。太刀洗は、誰を愛していたのか。手紙の本当の意味は。
 これらの謎が紐解けた時、切なさはより深まって、胸を締め付ける。そして、失われたものに想いを馳せる。

 ミステリー小説というよりは青春小説。そう評される本作だけれど、そんな単純なくくりで作品を規定していいものか。私はこう思います。これは、マーヤに恋をする小説なのだと。恋を青春と呼ぶのなら、青春小説なのかもしれない。けれど、そんなありふれた言葉は欲しくないし、いらないし、見たくもない。これは、マーヤに恋をする小説なのです。
 ※解説も必見。解説者の作品に対する愛情が感じられる一品に仕上がっています。

1.ミミズクと夜の王


 本年度の電撃ゲーム小説大賞、大賞受賞作品。純粋で、優しくて、綺麗で、美しい珠玉の物語。ミミズクの澄んだ心に胸打たれ、彼女を取り巻く登場人物たちの飾らぬ優しさと言葉に胸打たれます。何てことはない台詞が心に染み入って、揺さぶられて、気づけば涙がポロポロと。飾らぬからこその美しさもあるのだと、初めて知りました。電車の中では読まず、自宅でじっくりと言葉を噛み締めてほしい。

2.マルドゥック・ヴェロシティ2・3


 次々と倒れていくスクランブル09。虚無へと至る道のりだとわかっているのに、それでも目を放せない・放させない引力があります。主人公のボイルドと共にひたすらマルドゥック・シティを疾走していく感覚。
 最終巻になると、マルドゥック・スクランブルへと連なる様々な伏線が明かされ、全六巻のマルドゥックシリーズに厚みを持たせることに成功しています。バロットとボイルド・ウフコックの思わぬ因縁や、マルドゥック・スクランブルとシェルの関係性などなど。本シリーズを読み終わった後には、是非ともマルドゥック・スクランブルの再読を。ウフコックとバロットの出会いが、より一層、印象深いものへと変貌します。

2.春期限定いちごタルト事件・夏季限定トロピカルパフェ事件


 さよなら妖精の作者・米村穂信の人気シリーズ。目立たず、ひっそりと生活していく小市民を目指す小鳩君と小山内さんの、ちょっぴりおかしいミステリー小説です。独特の語り口と、小山内さんの妙な可愛さにページをめくる手が止まらない。けれども、小山内さんにはご用心を。可愛い、可愛いと思っていると……がぶりと食べられてしまいますので。
 小鳩君と小山内さんの、恋人でも友達でもない奇妙な関係性も魅力的。小山内さんは、本当は小鳩君をどう思っているのかわからないところもまた、もどかしくていい。あれこれと想像する余地があります。さよなら妖精もそうだけれど、恋に鈍感な主人公の一人称が一種の叙述トリックになっていて、いいアクセントに。

5.ファイアスターマン日記


 ネットの交換日記という面白い題材を扱った小説。ところどころにキラリと光っていて、ダイヤモンドの原石を見せられているようでした。つまりは荒削りということなのですが、デビューして五年近く経っていると知り、ビックリ。とても洗練されているとは言いがたい内容だったのです。確かにセンスはあると思うのだけれど、周囲にそれを磨いてくれる人がいないために、足踏みをしているのではないかな。いい編集者さんにめぐり合えれば、もっともっと面白いものを描けると思います。今後、この人の本を買うかどうかはわからないけれど、名前だけは覚えておこう。

 以上、今月の本でした。先月に引き続き、今月も素敵な本に巡りあえて幸せ。来月以降もこのペースで行きたいです。
 余談……沖方さんの新作がマルドゥック・ヴェロシティと同じ文体だと知って愕然。あの文体はボイルドを主人公にしていたからこそ光っていたのに。案の定、評判はあまりよろしくないよう。この人にはライトノベルは向いていないような気がします。
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テーマ : 読書
ジャンル : 小説・文学

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